スーパーオーディオCD
SACD-ハイブリッド(HYBRID)の第一歩 音楽ライター 山尾 敦史
SACD(エス・エー・シー・ディー)というものをご存知ですか。
ここ数年、CDを発展させた新しい音楽メディアとして注目され、 特にアコースティックの再生能力においては音楽やオーディオの専門誌でも絶賛されています。 発売されるソフトや手頃な価格の再生システムも増えてきている今、 いよいよ本格的にSACD時代が到来する予感。 そこでこの素晴らしいSACDがいったいどういったものなのか、 ほんの入門編ですがご紹介していきましょう。
- SACDって、
そもそもいったい何ですか? - SACD(スーパー・オーディオCD)は「Super Audio Compact Disc」。
その名の通り、CDよりもスーパーなデジタル・オーディオ・フォーマットです。
従来のCDではPCMという方式によって録音および再生が行われてきましたが、SACDでは「DSD(Direct Stream Digital)」という方式を採用。音をキャッチするサンプリング周波数が2.8224メガヘルツ(CDの64倍!)であり、より繊細な音の録音・再生が可能になったのです。
これにより楽器個々の音質やオーケストラなど集合体の存在感、録音空間(コンサートホール、スタジオなど)の広がりや奥行きなどがさらにリアルになり、聴き手へと伝わるようになりました。
- SACDって、
- 通常のCDプレーヤーでも聴ける
「ハイブリッド」 - SACDには、SACD専用プレーヤーでしか聴けないものと、通常のCDプレーヤーでも聴ける「SACD-ハイブリッド」というディスクがあります。現在リリースされている多くのソフトは、後者の「ハイブリッド」。これはディスクにSACD層とCD層が同時に収録されているもので、SACD専用プレーヤーであればSACD層を、通常のCDプレーヤーであればCD層を再生します。もちろんSACDの素晴らしいサウンドを体験するには、SACD専用プレーヤーでの再生がおすすめ。
またDVDソフトも観ることができるユニバーサル・プレーヤーや、なんとあのプレイステーション3(ソニー・コンピュータエンタテインメント)もSACDプレーヤーとして活用することができるのですから、ひょっとするとあなたはすでにSACDを堪能できる環境を手にしているのかもしれませんよ。
- 通常のCDプレーヤーでも聴ける
- 豊かな空間を再現する
マルチ・チャンネルにも注目 - CDは通常左右のスピーカーを使用した、2チャンネル・ステレオ再生が基本です。 しかしコンサートホールのリアルなサウンドや雰囲気・空気感などの再生には、まだまだ限界があると言わざるを得ません。SACDはこれに対し「マルチ・チャンネル(Multi-Channel)」という方式も使用。再生時に複数のスピーカーを使うことにより、コンサートホールの特等席(バランスの良いセンターの位置)に座っていただくのと同様の体験をすることができます。特にアコースティックが命とも言えるクラシック音楽にとっては、録音会場とリスニング・ルームとを近づける、画期的な方式だと言えるでしょう。
SACD商品の背表紙にはいろいろなマークが表示されています。
CDショップではこれらを目印にしてください。
- 豊かな空間を再現する
SACD-ハイブリッド、ここが聴きどころの第一歩! 3タイプの音楽で体験する音のリアリティ。
音だけではなく空間(アコースティック)の豊かさがポイント。 だからSACDにはクラシックやジャズのソフトが多いのです。
コンサート・ホールの 空間を感じる
- たくさんの楽器・奏者をそろえ、大きなコンサート・ホールで録音されることが多いオーケストラ・サウンド。SACDマルチ・チャンネルで聴く醍醐味は、その空間のリアルさや楽器の距離感です。特に前方で演奏される弦楽器と後方で演奏される管楽器との奥行き感は、録音現場のスタッフさえも驚いてしまうほどリアル。もちろん個々の楽器の音色もカラフルに響きます。
楽器同士の白熱感 音楽の緊張感が伝わる
- オーケストラと違って、個々の奏者の顔が音から見えてきそうな室内楽。 奏者(人間)の存在感が強く、それゆえに演奏の中でのコミュニケーションや緊張感が音楽を作りあげていきます。また演奏者それぞれの位置関係や楽器の音色の違いも聴きどころ。奏者特有の音色や演奏スタイル、楽器のメーカーによる音の差なども明快になり、より音楽へと迫ることができるでしょう。
演奏者の息づかいや 存在感を味わう
- ピアノ、ヴァイオリン、ギターなど特徴のある音色の楽器と、それを操る奏者の息づかいまでもが伝わってくるリアリティ。これこそがSACDならではのサプライズだと言えるでしょう。その場にいる迫力は、従来のCDよりも圧倒的。まるで音を目で見ているような感触さえ受けるほどです。お気に入りの演奏家が、自宅に来てリサイタルをしてくれるような感覚を味わえます。